朝ぼらけ

遠浅

空港に行った日

肌寒くなってきたな〜と朝の天気予報を観ながら思った日。犬を撫でながら朝食を摂る。今日はりんごを角切りにしてタンパクトと和えたやつにした。もったりしてお腹にたまる。
妹が大阪に帰るので、珍しく休みの父親と髪を切りたての母親で見送りに行くことになった。空港まで友達に送ってもらう予定だったらしく、友達の家まで妹を送り届けて3人で蕎麦屋。ここの蕎麦はおいしい。昔は「麺...天そばにしないとたんぱく質が...でも天ぷら...」とか思っていたけれど、蕎麦にはたんぱく質がちゃんと入っているのでざる蕎麦だけオーダー。知らないって損だ。


湯河原のつけ麺、ここの蕎麦、神田の鬼金棒は(現時点)私の人生における麺ベスト3で、特別枠として飲み倒したあとの富士そばがある。夜中に食べるアルコール分解のための富士そば、やわやわの麺も相まって最高なのだ。

食べ終わって11:30、フライトは13:40だからということで百貨店に行く。父親がスキンケア用品を新しくしたいらしくて、あーでもないこーでもないと言いながら青いデザインのものにした。香りが良かったらしい。スリーのを勧めたんだけど、コスメフロアに行くのは億劫だったらしくて今度サンプルをオンラインで注文する手筈に。マル。
あっという間に13:00になったので空港へ。妹とその友達(&子)をロビーで見つけて駆け寄る。
お子は1歳になったばかり、ふわふわの髪も小さいマスクもちぎりパンの腕も全てが可愛らしい。
空港内はスーツの男がたくさんいて、一様にツーブロックでゴリっと固めて黒くて軽そうなリュックを背負っていて、なんだかウッとなってベンチで休憩。スーツで背の高い男をちょっと怖がる自分にショックを受ける。ゲートを通る妹を見て、ああ見送る側はこんな感じなのかと思った。気をつけて。楽しんで。ちょっと寂しい。無事に帰って。これがグルグルとして、ふと羽田からの帰り道を思い出す。

離陸すると青緑の海が眼下に広がる。シートに押さえつけられた身体はふっと楽になって、角度が緩やかになる。暫くするとポーンという音でシートベルトサインが消灯。CAさんがカートを押しながら飲み物を配りに来る。うたた寝をして、起きると青暗い海とビルが向こうのほうに。飛行機は旋回しながらゆっくり下降、やがてガンッという衝撃と共に着陸。あの瞬間が、「やあやあ現実におかえり」と言われているようで苦手だった。空港内へ入ったらまっすぐ道なりに進む。手荷物は預けないのでそのままゲートの外へ。目の前のエスカレーターを降りてSuicaをタッチ、最短で乗れるモノレールに飛び乗る。東京の海、港区スポーツセンター、遠くに見える赤いタワー、下の方に見えるJR。次々と目に入るそれらに寂しさと安心と懐かしさを覚えたところで車両は浜松町に滑り込む。そのまま山手線のホームへ行って東京駅まで約10分。覚えている。

2.3分感傷に浸っている間にさっさと保安検査場を抜けた彼女は、気付くとガラスの壁の向こうにいた。
手を振って動画を撮る。
次に会えるのがいつかは分からないから、「良いお年を」とも伝えておいた。2020初めての年末の挨拶は思ったより早くきた。

帰りにユニクロに行ってピンクのパーカーを買って、夜は妹の片付け実況をみながら合鴨の鍋を食べた。
スーツケースを解くことも、ポストの中身をざざっとさらうことも、冷蔵庫の中に牛乳を補充することも、今の私には縁遠い。
春までは私もこのスマホの向こう側だったんだなと変な気持ちになる。
早く飛行機に乗って遠出ができるようになると良い。