朝ぼらけ

遠浅

ベビーカーの会話には入れないけれど

「やりがいとか全くないと思うんですけど大丈夫ですか?」とお昼休みに言われて驚く。
やりがい。
聞けば、やることと覚えることは多いが慣れてしまえば日々が繰り返しの作業となるため虚無感をおぼえる人が多いと言う。なるほど。前は大きなところにお勤めだったようだからと続けられてああ、と思う。商社で働いていたと言うと大体の人が忙しそうで...といい、社名を言うと眉が上がる。親会社がでかいだけなのに。とりあえず私はやりがいなんてもんに重きを置いてないので大丈夫ですと返して、ニコニコしながら会話の続きをやった。なんだかんだ人に恵まれていて、そこそこ楽しく笑顔の多い職場である。

やりがいって何なんだと帰りの自転車で考えて、私の場合それを感じるには責任感がついてきそうだな〜とぼんやり気づく。
営業やって数字上げて達成、これもやりがい。
目の前のお客さんのために身を粉にして感謝を言われて、これもやりがい。面倒なクレームを消化するのだってやりがいだ。
でもその達成感や満足度は、私の場合「責任感」を感じてないと得ることができない。大学生の頃のアルバイトで住宅展示場の受付をした際なんかはまさに責任感の欠如も甚だしくて、なんとなくパソコンの前に座ってお客を流しメーカーの人にデータを渡してタラタラ帰っていた。だるくて休むことだってあった。あれはきっと「クソどうでもいい作業要員だし、適当にやって帰ればいいや〜時給良いし〜間違ってでも知らね〜」の考えが根っこにあったのだ。だから帰ってきても疲れもせず満足度もなく、終わった という実感だけがあった。

じゃあ新卒で入った会社は?というと、あれは責任感を逆に持ちすぎで(自分で責任感あるっていうのウケるね、就活かな) 船の手配が出来なさそうなら胃が痛んだし台風が発生したと知ったら慌てて在庫を確認したし取引先の言うことは朝残しまくってでもほぼ叶えるようにして、感謝をされたときに「あーーよかった!嬉しい!!安心!」と思ったものである。金もらってる以上はプロだからという大好きだった取引先の男性に聞かされたというのもあった。周りの人は「自分の手が入ったものが市場に出回るところにやりがいを感じる」と言っていたけれど、私は別にゼリーが並ぼうが缶詰が並ぼうが豆乳が出回ろうが新作が発表されようが特に何も思わなかった。ただただ、客に「間に合った〜ありがとう」と言われることが嬉しかった。今のお仕事も大体が人にお礼を言われる立場なので満たされていて、一応私が間違えるとエラいことになるので責任はほんのり感じている。あれ?これはやりがいを感じているということなのでは?オッケーじゃん、と思ったところで家に着いた。

何の話?と思うけど、一応着地したからよし。
すっきりもした。
今のところ、飽きてだるいという気持ちで仕事をしているわけではない。オッケー。
夜勤の先輩に何かおやつでもと思ったけど買うのを忘れていた。これも帰ってから気付く。
救急の担当するのは半年後かららしいけど、どうなんだろう。数ヶ月先の自分が予想できないようになった。とりあえず毎日は地続きで、1日1週間1か月の積み重ねでなんとなくそれっぽくなると知っている。
焦らず惑わず歩きたいね。