最高気温20度
よく晴れていた。
用事を片付けるために、自転車を漕いで初めて入る土地に行った。
小綺麗な家ばかりだなあと思っていたら突然長屋のような、平屋のような、ところどころトタンの剥がれ落ちた家が出てきた。
向こうのほうからは子どもの遊ぶ声と笑い声が聞こえるのに、こちら側は朽ちている。
奇妙な土地だった。
居心地が悪い、と思って歩き続けると墓地が現れた。コンビニひとつ分くらいの真四角の土地に墓石がずらりと並んでいる。
一帯を線で区切って、明確にこちらとあちらで違いがある。真ん中にあるのが墓地だ。墓を通り抜けたら家の様がガラリと変わる。物干し竿に服の袖を突っ込んで干しているのなんて、曽祖母の住んでいた島でしか見たことがなかった。
やたら人形が転がっている庭もあって気味が悪く、顔を顰めている間に目的地に到着、いかにも「単身者用賃貸」という部屋に入って息苦しくなりさっさと荷物を入れて部屋を出た。
そのあとは楽しかった。
夜、父親にその話をしたら「あの辺りは昔田圃が広がっていて、それを潰して新興住宅地としたからちぐはぐになっている」とのことだった。納得である。
私は私の生まれた地域が好きだけれど、妹の彼氏に言わせれば「何もない」となる。湯質の良い温泉も小さな本屋もあるんだけどな。
自転車で30分移動すれば全く知らない土地の広がりがあるから仕方ない。
次の休みはどの方面に行くか考える。
人の手が完全に入って、完璧に整地された住宅街が見たい。