朝ぼらけ

遠浅

ハニオ日記

石田ゆり子さんの書かれた『ハニオ日記』が先日出版されました。3冊とも無事購入でき、青い箱のほうも後日届く予定です。

2016年から2021年までのインスタグラムの投稿を本にまとめた今回のハニオ日記。

私は2017年頃から石田さんのアカウントをフォローさせてもらっていて、彼ら(石田さんちの家族)の毎日を眺めさせてもらっています。東京で、一人暮らしで、動物と離れて暮らす私にとって彼女のインスタグラムは本当に救いであり癒しでした。


彼女の著書で初めて読んだのは、初代ラブラドールの花ちゃんとの日々をまとめた「はなちゃんの夏休み」。チョコレート色でやんちゃな彼女と石田さんの奮闘記録にはたくさん笑わせてもらって、そこからエッセイを知って、天然日和がすごく好きだなと思って。動物への接し方、愛情の注ぎ方、日常への考え方と姿勢、文章の雰囲気。そこから石田さんのファンになりました。

インスタグラムの方では猫のハニオのきもちを投稿したり、石田さん自身のことをぽつぽつ語られたり、どちらもすごく『石田ゆり子』という人となりが文にあらわれているようで楽しいのです。


読み終わった感想ですが、とっても、とっても、とっっても優しくて心が澄む感覚になったというのが率直なところです。曖昧だなと自分でも思います。でも本当にそう。

ずっとインスタグラムで目にしていた投稿が、紙として手元に現れて、1日1日のページをめくりながらなぞるだけでこんなにも受け取り方が違うものなのか。正直驚いています。

でもそれと同じくらい幸せな気持ちになっている。

読んでいると、自然と口角が上がるのです。そして目尻は下がります。『ハニオ日記』の名の通り、猫のハニオとしての石田さんちの様子がとても可愛らしく書かれています。



ささみのふんいき。ちゅーるのかおり。

ぼくがあたらしいこに みずのみばをおしえます。

おかーさんが ちいさいこをつれてきた。


こんな感じ。


なんてかわいいの。

ささみのふんいき だなんて、そんな言葉の繋ぎ方がありますか。


3冊に分けているとはいえ5年分なので、1冊がしっかり分厚い。2cmちょいくらいあります。

インスタグラムの投稿をまとめただけでなく、箇所箇所に石田さん自身の言葉で2-3ページほど文が紡がれていて、私が特に胸を打たれたのは、「動物は、人間がどれだけ治療を施そうとあがいても 一つひとつ確実に体の機能を閉じていく。」というところ。

本当にそう。避けられないことと分かっていて、日々理解しつつ一緒に暮らしていても別れの時はどうやったって悲しいし辛いしやるせない。疾患によるものであれば尚更です。でもこれが不思議なもので、動物は確実に、潔く、虹の橋を渡る準備を始めるんですよね。先のことを考えて泣くのではなく、今の、この瞬間だけを精一杯生きる。抗うことなく身体の機能を閉じていく。だからこそ人間として、一緒に暮らすパートナーとして、彼らに出来ることは全てしてあげたい。機能を閉じるにしても、なるべく痛みの少ない方法で。自然の流れを止めないように。そして、心臓の止まる最後の時までうちの子になってくれてありがとうと思う。

別ページに綴られていた、「私の日々は彼らにおんぶにだっこ、である。弱った心や疲れた体をいつも変わらず癒してくれる彼らは私にとっては神様のような存在であるのです」という箇所にもうう、泣いてしまう。


私は12の頃から犬と暮らすようになりました。

ペットショップで、3年もケースの中に入れられて、保健所に連れていかれる運命にあった子をご縁により迎えたのが最初です。年々増えて、見送って、拾って、引き取って。今は3匹の犬と2匹の猫。

私の家は、確実に動物のおかげで崩壊せずにここまで来ました。これは家族全員がそう言います。はちゃめちゃな状況が続いた時も、この子達の笑顔のおかげで救われて、この子達の体のことをきっかけにして会話をしていたように思います。石田さんの仰っている「神様のような存在」というのが、すごく分かる。

彼らは憎んだり理不尽に怒ったり攻撃したりしてきません。性格もあると思いますが、いつも笑顔で、たのしく、こちらがしゅんとしていると元気付けようとしてくれる。

日々に追われる中でその当たり前の有り難さに甘えてしまいそうになりますが、本当はすごく幸せなことなのだよなと改めて思います。

ペットショップから保健所への流れを自然に書いてしまったけれど、業界のさがとして仔犬仔猫でなければ価値がないとされる世界です。石田さんは、その販売オークション(2か月にも満たない頃から出されます)から弾かれてしまった子たち(はちみつ兄弟、ばぶお、バンビがそう)を引き取って暮らしています。

はちみつ兄弟に関してはスコティッシュフォールドなのに耳が折れていないから。

そんな。

でもそれが現実なんですよね。

生体販売を禁止した国は増えているのに、この国だけ放置とされていて。命に値段をつけて、価値がなくなれば即処分して、そんなサイクルがうまれているのが現状です。

私に出来ることは署名に参加するだとか、ふるさと納税の返礼を保護犬の会にするだとか、そういう小さなことしか無いけれど。

しないよりはしたい、と思います。

ハニオ日記の印税はすべて保護犬・保護猫のたちのために使うと明記されていて、そこも「うわあ石田ゆり子さんだ」と思いました。勝手な感想ですが。


すごく素敵な本だよと言いたいのに話が逸れてしまった気がするな。


ハニオ日記は、ぺらぺらっとてきとうに開いたページを見開きで読むだけでなんだか元気が出る本です。

動物の表情、それにマッチしたなんともいえない語り口の文章、本そのものから漂うあたたかくて柔らかい何か。

心の苦しいとき、クサクサしてしまうとき、さみしいとき、なんだか癒されたいとき、優しいものに触れたいとき。そんな瞬間にめくりたいなと思います。


↓ほんとはもう1冊あります

f:id:turatura:20210605212213j:plain


(読書感想文は楽天ルームに適当に投げることが多いんだけど、こんなにまるく優しく純粋なものをアフェリエイトサイトで紹介するのはぜったい違う、と思ってブログに書くことにした。少しでも、これを読んでくれた方がハニオ日記に興味を持ってもらえたら嬉しいです。石田ゆり子さんのインスタグラムはとっても良いよ。)